でんさいで資金調達!でんさい割引とファクタリングについて徹底解説

でんさいで資金調達!でんさい割引とファクタリングについて徹底解説

「資金調達したいのだけど、負債は増やしたくないし」
とお考えの経営者はいらっしゃるでしょうか。
負債を増やさずに資金調達できればいいですね。

ここでは流動資産を利用しての資金調達(アセットファイナンス)について説明します。
アセットファイナンスであるでんさい割引とファクタリングに関してです。
でんさい割引とはでんさい(電子記録債権)を利用した資金調達方法で、ファクタリングとは売掛金を利用した資金調達方法です。

この記事を読むとでんさいとは何か、またでんさい割引について、またファクタリングについて理解できます。
資金繰りに悩んでいる方にはぜひ参考にしてください。

でんさい(電子記録債権)とは?


でんさいとは正式には電子記録債権といい、株式会社全銀電子債権ネットワーク(通称でんさいネット)が取り扱う電子記録債権を指します。

でんさいは手形や振込などに代わる新たな決済手段です。手形を振り出す代わりに取引金融機関のインターネットバンキングを利用します。

商取引後、債務者はでんさいが指定した取引内容の発生記録を作成し、取引金融機関経由ででんさいネットに発生記録が記録されます。その後、支払期日に債権者の口座に振り込まれる流れです。

また、債権者は受け取った電子記録債権を支払いのため取引先に譲渡(または分割譲渡)もできます。

でんさいを利用するにはどのような手続きが必要?

でんさいを利用するにあたって、次の2点に分けて考えます。

  • 事前検討
  • 申し込み

事前検討

でんさいを利用を検討する際、考えておきたいことは次の3点です。

でんさいに切り替えた際のコストの比較

現在商取引で利用している手形の発行手数料、印紙税などの費用をチェックします。
でんさいを導入によりどのように変化するかを把握しましょう。

取引先がでんさいを利用しているのかを確認

取引先がでんさいを導入していないと電子記録債権を利用できません。
でんさい導入前に取引先がどれくらい利用しているのかを確認しておきましょう。

社内の事務、会計システムを確認

でんさいを利用しても社内事務が煩雑になってはいけません。また、自社が使用している会計システムで対応可能であるか確認する必要があります。

申し込み

でんさいを利用するには取引金融機関で利用申し込みをしなければなりません。
複数の金融機関で利用を検討する場合、それぞれの金融機関での申し込みが必要です。
でんさいネットは2022年8月現在、銀行、信用金庫、信用組合、商工中金、農業系金融機関など495の金融機関で取り扱っています。

申し込みをした金融機関で一定の審査を経てでんさいネットに登録され、申込者に利用開始通知が送付されます。
利用者番号は1利用者に1つで、9桁の英数字の組み合わせです。
利用者番号は商取引で相手先に伝える重要な番号ですので、忘れないようにしましょう。

でんさい申し込みについての手数料はかかりませんが、利用時に手数料が必要です。
三井住友銀行のでんさい手数料は1件につき以下のようになっています。

  • 債務者の発生記録手数料:440円~770円
  • 債権者の決済手数料:220円

でんさいのメリット

でんさいのメリットとして、以下の3点があります。

印紙税が不要

手形を振り出す際、振出金額に応じた収入印紙を貼らなければなりません。
でんさいは電子記録債権なので収入印紙は必要ありません。

振出の手間や郵送などの事務負担が軽減

仕入資金などを支払うときに手形を振り出します。金額の記入や印紙の貼り付け、遠方の取引先の場合、手形を郵送しなければなりません。
でんさい利用では事務作業が不要となり、事務負担が軽減できます。

紛失や盗難の心配がない

手形は紙であるため、紛失や盗難といったリスクがあります。電子記録債権であるでんさいでは手形のような現物が存在しないため、紛失等のリスクを避けられます。

でんさいのデメリット

でんさいのデメリットとして次の3点が考えられます。

事前申し込みが必要

でんさい利用には取引金融機関に事前申し込みが必要です。複数の金融機関での利用する場合、それぞれの金融機関で申し込みが必要となります。

手数料がかかる

発生記録を作成し取引金融機関へ送る際に手数料がかかります。また、受取人(債権者)も手形を受け取る場合にはかからない費用が、でんさい利用では決済手数料として費用が必要です。

取引先もでんさいを利用している必要がある

でんさいネットでの取引は債権者、債務者双方がでんさいネット利用をしていることが前提です。債務者がでんさい利用していても債権者が利用していない場合、従来通り決済手段として振込や手形振出を行わねばなりません。

でんさい割引とは?


でんさい(電子記録債権)を利用してでんさい割引が可能です。手形割引の電子版と考えていいでしょう。基本的に手形割引と同じですが異なる点もあります。

でんさい割引は手形割引の電子版と考えられています。でんさい割引について次の5点を押さえておきましょう。

  • でんさい割引の申し込み
  • 審査
  • 割引料(手数料)
  • 一部分割譲渡が可能
  • 電子記録債権が債務不履行の場合

でんさい割引の申し込み

でんさい割引を検討している電子記録債権を保有している事業者は、でんさい割引取扱機関に割引申し込みをします。
でんさい割引取扱機関は審査に必要な書類を申込人に求め、でんさい割引が妥当であるかを審査します。
でんさい割引取扱機関は銀行など市中金融機関および手形割引業者です。

審査

でんさい割引取扱機関は申込人および支払先(手形での振出人に相当)について審査します。支払先が電子記録債権を支払うに十分な信用力があるのか、また、申込人について、万一電子記録債権が債務不履行(手形でいう不渡手形に相当)に陥った際、買い戻せる信用力があるか等についてです。

割引料(手数料)

一般的に銀行など市中金融機関では1.5%~5.5%、手形割引業者では3.0%~15.0%が相場とされています。

一部分割譲渡が可能

手形割引の場合、例えば100万円の手形であれば100万円に対して割引を行いますが、でんさい割引では、電子記録債権が100万円でも一部である30万円を割り引くなど分割譲渡が可能です。

電子記録債権が債務不履行の場合

電子記録債権が債務不履行となった場合、つまり手形でいう不渡手形となった場合、金融機関や手形割引業者は申込人に割り引いた債権を請求でき(買戻請求権)利用者はでんさい割引取扱機関に割引相当額を支払わなければなりません。

でんさい割引のメリット

でんさい割引のメリットには以下の3点があります。

手数料が低い取扱機関がある

通常、金融機関か手形割引業者によって異なります。金融機関では1.5%~5.5%、手形割引業者の場合3.0%~15.0%が相場とされています。

一部の割引も可能

手形割引では手形に記載された金額に対して割引を行いますが、でんさい割引は電子記録債権の一部を割り引けます。手形割引と比べ利用者が資金繰りに必要な金額だけを割り引きできます。

紛失・盗難の心配がない

手形割引では、手形割引取扱機関へ持参または郵送しなければなりません。道中で紛失や盗難に遭う恐れもあります。でんさい割引ではインターネットで電子記録債権の譲渡を行うため、紛失・盗難の心配がありません。

でんさい割引のデメリット

でんさい割引のデメリットとして以下の3点が考えられます。

遡求権が発生する

電子記録債権の債務者が期日に支払えない場合、つまり債務不履行となった場合、でんさい割引取扱機関は利用者に割り引いた金額を請求できます。つまり遡求権が発生するため利用者はでんさい割引取扱機関の請求に従わなければなりません。

融資と同じ審査がある

でんさい割引は債権の売買ですが、融資と同じ審査があります。
支払先の信用力、債務不履行になった場合、利用者から回収が可能であるかについて審査します。審査には時間がかかるため、利用者は余裕をもって申し込みましょう。

ネットのセキュリティ対策が必要

でんさいにはネット環境が不可欠です。ウイルス被害やハッキングに備え利用者は対策を講じておかねばなりません。

ファクタリングとは?


同じく売掛債権を使った資金調達方法としてファクタリングがあります。
ファクタリングとは売掛金をファクタリング会社へ売却することで現金化が可能です。

ファクタリングは売掛金を保有している会社がファクタリング会社に売掛金を売却して資金を調達する方法です。

ファクタリングの種類

ファクタリングには大きく分けて買取型ファクタリング、保証ファクタリングの2種類があります。ファクタリングといえば買取ファクタリングを指すのが一般的です。

買取ファクタリングの方式

買取ファクタリングには2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの2つの方式があります。

2社間ファクタリング

利用者とファクタリング会社との間で行われ、売掛先に知られずに利用者は資金調達が可能です。利用者はファクタリング会社との間で売買契約を交わして売掛金を売却し、ファクタリング会社は利用者の指定口座に入金します。

売掛先から売掛金が入金されると利用者は契約で定められた日にちまでにファクタリング会社に入金しなければなりません。
手数料は相場として5%~15%が一般的です。

3社間ファクタリング

利用者とファクタリング会社、売掛先の3社間で行われます。
利用者の保有する売掛金をファクタリング会社に債権譲渡するため、売掛先は利用者でなくファクタリング会社に入金しなければなりません。
手数料は2%~9%が相場で2社間ファクタリングより低い設定となっています。

ファクタリングの審査

ファクタリング会社は利用者の保有する売掛金を買い取るため、売掛先が確実に入金されるのかを審査します。
利用者が多重債務であったり税金が未納であったりしても審査にほぼ影響しないのが特徴です。

ファクタリングのメリット

ファクタリングのメリットとして以下の3点があります。

支払義務がない

ファクタリングは売掛金をファクタリング会社が買い取るため、売掛先が支払不能となっても利用者はファクタリング会社に支払義務はありません。

審査が早い

申し込みから即日~3日ほどで審査の可否が判明します。審査の早いファクタリング会社では即日利用者の指定口座に入金するファクタリング会社もあります。

保証人や担保が不要

融資でなく、売掛金の売買ですので、保証人や担保は必要ありません。逆に、保証人や担保を求めてくるファクタリング会社であれば注意が必要です。

ファクタリングのデリット

ファクタリングのデメリットとして次の3点が考えられます。

手数料が高い

2社間ファクタリングでは10~20%が相場とされているため、一般的に融資に比べ手数料は高いといえます。

ファクタリングの種類では売掛先に利用が知られる

3社間ファクタリングでは、利用者は売掛先にファクタリング利用を知られることになります。そのため、売掛先が利用先に関して資金繰りが厳しいのでは、と思われ、今までの信頼関係にヒビが入る恐れがあるかもしれません。

悪質業者に当たる恐れがある

ファクタリング会社は市中金融機関と違って免許制でないため、ファクタリング会社を名乗り、法外な手数料を要求される恐れがあります。ファクタリングを利用する際にはファクタリング会社を十分調べて利用しましょう。

まとめ


でんさいとは正式には「電子記録債権」と呼び、手形や振込に代わる電子システムで、全国の495の金融機関で取り扱っています。
債務者は債権者に取引内容の発生記録を作成し、取引金融機関経由ででんさいネットに記録されます。期日になると債権者の口座に金融機関経由で入金されます、
特徴として、手形のように紛失、盗難に遭わない反面、取引先もでんさいネットを契約していないと電子記録債権は利用できません。

でんさい割引はでんさいを利用した資金調達方法です。
手形割引のように手形の記載金額を割り引くだけでなく、電子記録債権の一部を割引できます。債務者が債務不履行となった場合、でんさい割引利用者は買い取る必要があるので注意しましょう。

ファクタリングは売掛金をファクタリング会社に売却することによる資金調達方法です。
手数料はでんさい割引より高めですが、売掛先が債務不履行となっても利用者は支払う必要はありません。またファクタリングは審査が早い点も特徴です。

でんさい割引、ファクタリングともに流動資産を活用した資金調達方法です。
融資でないため、会社の安全性の指標の一つである自己資本比率を維持できます。
でんさい割引、ファクタリングを上手に活用し資金繰りの安定を図りましょう。