建設業は、工事の完了後に代金が支払われることが多いことから、資金繰りが難しいと言われています。
さらに、元請け、下請け、孫請けの会社があるように、工事に関係する会社が多いことから、資金繰りがさらに難しくなっています。
このような課題を解決するためには、資金調達と建設業の資金繰りの改善がとても重要になります。
そこで、この記事では建設業の資金調達にマッチした方法を解説するとともに、建設業の資金繰りの課題と改善ポイントを解説します。
建設業の特徴
建設業の特徴として、資金繰りが難しいことが挙げられます。
というのは、工事の完了後に代金が支払われるため、必要な資金の多くを立て替えなければならないからです。
建設業の工事にあたって必要となる資金には、次のような資金があります。
- 材料費
- 人件費
- 外注費
- 設備資金(事務所費、車両購入費、什器・備品購入費など)
また、建設業では複数の工事を受注することもありますが、受注が増えると資金繰りがさらに難しくなります。
そのため、運転資金の管理がさらに重要になります。
建設業の運転資金を管理する上で重要になるのが、資金繰りの改善と資金調達です。
そこで、次のところからは、建設業の資金繰りと資金調達について解説します。
建設業の資金繰りは難しい理由とは
建設業の特徴として、資金繰りが難しいと解説しましたが、ここでは、建設業の資金繰りが難しい理由について、詳しく解説します。
建設業の資金繰りが難しい理由には、次のようなものがあります。
- 売掛金の回収までの期間が長い
- 工事前に多くの資金が必要
- 銀行融資を受けることが難しい
- 連鎖倒産のリスクがある
- 工事原価の管理ができていない
それぞれ解説します。
売掛金の回収までの期間が長い
建設業の資金繰りが難しい理由として、まず挙げられるのは、売掛金の回収までの期間が長いことです。
というのは、工事が完了するまで売掛金の回収ができないからです。
売掛金の回収までの期間は、通常数ヶ月から1年以上かかります。
工事期間中は、代金の支払いがないにもかかわらず、材料費や人件費などを立て替えなければならないため、支出ばかりが多くなってしまいます。
そのため、建設業の資金繰りは難しいのです。
工事前に多くの資金が必要
建設業の資金繰りが難しい2つ目の理由として、工事前に多くの資金が必要なことが挙げられます。
建設業では、工事が完了するまで売掛金の回収ができないため、入金までの期間が長い傾向があります。
そのため、工事前に多くの資金が必要になります。
すでに解説した材料費や人件費、外注費、設備資金のほか、工事の受注だけでなく、発注をする建設業者もいます。
その場合、発注側が下請け業者に手出しと呼ばれる前金を支払う必要があります。
その分、さらに支出が増えてしまうため、建設業の資金繰りが難しくなってしまうのです。
銀行融資を受けることが難しい
建設業の資金繰りが難しい3つ目の理由として、銀行融資を受けることが難しいことが挙げられます。
建設業には売掛金の回収までの期間が長いという特徴があるため、工事が完了するまで支出が多くなります。
そのため、中小建設業の中には、赤字経営に陥っている業者がいます。
そのことを銀行は把握しているため、建設業は銀行融資を受けることが難しくなっています。
連鎖倒産のリスクがある
建設業の資金繰りが難しい4つ目の理由として、連鎖倒産のリスクがあることが挙げられます。
というのは、建設業には多くの大企業や中小企業が関わっているため、1つの会社が倒産してしまうと、関連会社が倒産するリスクがあるからです。
その関わり方も、元請け、下請け、孫請けという関係であるため、建設業は連鎖倒産しやすい業界であると言われています。
連鎖倒産リスクがあることから、建設業の資金繰りは難しくなっているのです。
工事原価の管理ができていない
建設業の資金繰りが難しい5つ目の理由として、工事原価の管理ができていないことが挙げられます。
というのは、利益の上がらない赤字案件を受注していることがあるからです。
つまり、利益が上がる黒字案件か、利益の上がらない赤字案件かの見極めができていないということです。
このような見極めができていたとしても、売上を上げたいという思いから赤字案件を受注してしまっているのです。
このような状態では、経営は赤字になり資金繰りが悪化してしまうため、工事原価を管理する必要があります。
建設業の資金繰りを改善するポイントとは
建設業の資金繰りが難しい理由を解説しましたが、建設業の資金繰りを改善するにはどうしたらいいでしょうか。
ここでは、建設業の資金繰りを改善するポイントを解説します。
建設業の資金繰りを改善するポイントには、次のようなものがあります。
- 売掛金の回収時期をできるだけ早める
- 資金繰り表を作成・管理する
- 赤字になる工事を受注せず、利益を上げる
それぞれ解説します。
売掛金の回収時期をできるだけ早める
建設業の資金繰りを改善するポイントとして、まず挙げられるのは、売掛金の回収時期をできるだけ早めることです。
というのは、売掛金の回収時期をできるだけ早めれば、その分材料費や人件費などを立て替える必要がなくなるため、資金繰りが改善されるからです。
具体的には、工事の進捗に合わせて売掛金を回収できる工事を受注したり、契約する際に工事の進捗に合わせて工事代金を支払ってもらえるよう交渉したりすることが重要です。
資金繰り表を作成・管理する
建設業の資金繰りを改善する2つ目のポイントとして、資金繰り表を作成・管理することが挙げられます。
というのは、建設業では工事が完了するまで売掛金の回収ができないことから、資金の流れ(入出金)がわかりにくくなっているからです。
資金繰り表を作成・管理すれば、どの工事を受注すれば、黒字になるか、赤字にならないかがわかるようになります。
つまり、資金繰り表により運転資金の過不足がわかるため、黒字になる工事を受注できるようになるのです。
その結果、建設業の資金繰りは改善します。
赤字になる工事を受注せず、利益を上げる
建設業の資金繰りを改善する3つ目のポイントとして、赤字になる工事を受注せず、利益を上げることが挙げられます。
というのは、いくら売上が大きくても、赤字になる工事を受注すると、資金繰りが厳しくなってしまうからです。
それだけ黒字の工事を受注することは、大事なことなのです。
利益が上がる工事を受注できれば、資金繰りは改善されます。
建設業の資金調達方法
建設業は資金繰りが難しいため、資金調達が重要になります。
そこで、建設業の資金調達方法について解説します。
建設業の資金調達方法として、次の3つを挙げることができます。
- 日本政策金融公庫の新創業融資制度
- 信用保証協会の信用保証制度
- 各金融機関のプロパー融資
それぞれ解説します。
日本政策金融公庫の新創業融資制度
建設業の資金調達方法として、まず挙げられるのは、日本政策金融公庫の新創業融資制度です。
日本政策金融公庫とは、一般の金融機関が行う金融を補完することを目的とした政府系金融機関です。
中小企業や農林水産業者向けの融資を行っているほか、創業者向けの融資も行っています。
建設業の創業者向けの資金調達方法として利用できるのが、日本政策金融公庫の新創業融資制度です。
新創業融資制度とは、創業者向けに低金利、担保・保証人不要で設備資金や運転資金を融資する制度になります。
通常、自己資金(創業資金総額の10分の1以上)が必要になりますが、現在勤めている会社と同じ業種の事業であれば、自己資金は不要になります。
そのため、建設業の会社に勤めている人が起業する場合は、自己資金は不要です。
建設業に限らず、創業時は会社に信用がないため、金融機関はなかなか融資をしてくれません。
そんな中で、良い条件で借入れできる日本政策金融公庫の新創業融資制度は利用したい制度になります。
信用保証協会の信用保証制度
建設業の2つ目の資金調達方法として、信用保証協会の信用保証制度が挙げられます。
信用保証制度とは、中小企業が銀行などの金融機関から融資を受ける場合、信用保証協会が債務を保証することにより、融資を受けやすくする制度です。
この場合、中小企業は信用保証協会に対し、信用保証料を支払う必要があります。
信用保証協会は各都道府県などにある公的機関であり、中小企業が融資を返済できなくなった場合に、中小企業に代わって返済します(代位弁済)。
中小企業が信用保証制度を利用する場合、直接、信用保証協会に申し込むことができるほか、融資を申し込む金融機関を通じて、申し込むことも可能です。
信用保証制度を利用することにより、融資を受けた金融機関との関わりができるというメリットもあるため、信用保証制度を利用することはおすすめです。
各金融機関のプロパー融資
建設業の3つ目の資金調達方法として、各金融機関のプロパー融資が挙げられます。
プロパー融資とは、銀行などの金融機関から直接融資を受けることを言います。
ここで言う「直接融資」とは、信用保証協会による信用保証付き融資ではないことを意味します。
しかし、プロパー融資は、信用があるからこそ受けられる融資であるため、審査が厳しくなっています。
そのため、建設業の場合、信用の高い大企業ならまだしも、信用の低い中小企業が融資を受けるのは難しいと言えます。
各金融機関のプロパー融資と信用保証付き融資を比較すると、次のようになります。
プロパー融資 | 信用保証付き融資 | |
---|---|---|
融資の審査 | 厳しい | 通過しやすい |
限度融資額 | 上限なし | 上限あり |
金利 | 低い | (プロパー融資より)高い |
融資対象 | 大企業中心 | 中小企業・個人事業主 |
建設業の資金調達にマッチしたファクタリング
建設業の資金調達方法を解説しましたが、近年建設業で普及しているファクタリングという資金調達方法があります。
というのは、ファクタリングは、建設業にマッチした資金調達方法だからです。
ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング業者に譲渡することにより、売掛金の支払い期日前に資金調達する方法です。
すでに解説したとおり、建設業では工事代金の支払いが工事完了後のことが多いことから、立替払いが多くなってしまうという特徴があります。
そのため、建設業の資金繰りは難しいのです。
そこで、ファクタリングを利用すれば、工事の途中で資金調達できることから、立替払いを少なくすることができます。
さらに、売掛債権さえあれば資金調達できるので、長期間、売掛債権を抱えている建設業は、ファクタリングとの相性が良いのです。
そんなファクタリングのメリット・デメリットをまとめると、次のようになります。
ファクタリングのメリット
- 最短即日で資金調達が可能
- 融資が期待できない場合でも、売掛債権さえあれば利用できる
- 融資(金銭消費貸借契約)ではなく債権譲渡(契約)であるため、信用情報に記録されない
- 審査対象が売掛先の信用力であるため、自社の経営状況が悪くても利用可能
- 売掛先が倒産しても、ファクタリング業者から請求されない(ファクタリング業者が責任を負うため、償還請求権がない)
- 売掛先に債権を譲渡したことを知られる心配がない(2社間ファクタリング)
ファクタリングのデメリット
- 手数料が発生する(融資における利子と比べ高い)
- 売掛先に債権を譲渡することを知られてしまう(3社間ファクタリング)
まとめ
この記事では、建設業の資金調達にマッチした方法を解説するとともに、建設業の資金繰りの課題と改善ポイントを解説しました。
建設業の資金調達にマッチした方法とは、ファクタリングです。
実際、多くの業種のように建設業でもファクタリングの利用が広がっています。
売掛金の支払いが工事の完了後まで待たなければならない建設業の資金調達方法として、ファクタリングは最適です。
というのは、新たな資金調達が必要になったときに、売掛債権を譲渡すれば、工事の完了前に資金調達が可能になるからです。
この記事が、建設業者の資金調達や資金繰りの参考になれば幸いです。