会社は先立つもの=資金がないと運営できません。規模が小さいうちはすべて自己資金で賄えるかもしれませんが、ある程度の規模になってきたら限界もあるでしょう。
そこで検討しなくてはいけないのが、資金調達です。
今回の記事では、資金調達の目的や方法、方法ごとのメリットとデメリットを徹底解説します。
資金調達の目的は会社の事業拡大と信用力の向上にある
最初に、そもそも資金調達が何か、何のために行うのかを簡単に整理しておきましょう。
意味がわかれば、会社にとって資金調達がいかに大事かがわかるはずです。
資金調達とは
資金調達とは、個人や法人が会社を設立したり、事業の立ち上げ・拡大を行ったりする際に、外部から必要資金を調達することを指します。
簡単にいうと「自分以外の誰かから資金を出してもらうこと」と考えましょう。
資金調達の目的1.事業立ち上げ・拡大
資金調達を行う目的の1つが、事業の立ち上げ・拡大です。
事業の立ち上げ、拡大を行うには自社の経営課題を分析し、市場調査や研究開発、M&Aによる買収などの取り組みが求められます。
しかし、これらの取り組みは資金がないと実行できません。
まずは先立つものを用意する、という意味で資金調達が非常に重要になります。
資金調達の目的2.会社の信用力の向上
資金調達には、会社の信用力を向上させる意味合いもあります。
資金調達に成功するためには、会社に相応の信用力がないといけません。
つまり「資金調達ができるほどの会社であれば、それなりにちゃんとしているはず」という印象を植え付けることができます。
資金調達にはさまざまな方法がある
会社にとって資金調達は非常に重要ですが、より大事なのは「自社にあった方法を厳選して使う」ことです。
以降において、一般的に使われるものとして、以下の9つの資金調達方法を紹介します。
- 金融機関から融資を受ける
- 私募債を使う
- 不動産担保ローンを使う
- 株式を発行し出資を受ける
- 資産を現金化する
- ビジネスローンを使う
- 日本政策金融公庫から融資を受ける
- 補助金や助成金を使う
- クラウドファンディングを使う
資金調達の方法その1・金融機関から融資を受ける
都市銀行や地方銀行、信用金庫・組合や労働金庫など、一般的な金融機関から事業資金の融資を受けるのは、幅広く用いられている方法の1つです。
なお、融資を信用保証協会による保証のある・なしで分けると、以下の2つに分類されます。
- プロパー融資:信用保証協会による保証を利用せず、事業者が金融機関から直接融資を受ける
- 信用保証協会の保証付き融資:信用保証協会に保証人となってもらい、金融機関から融資を受ける
メリット
金融機関から融資を受けるメリットとして、比較的多額の資金を調達できることが挙げられます。
たとえば、埼玉県信用保証協会の保証付き融資を使う場合、運転資金として最大で5,000万円を調達することが可能です。
なお、実際に調達できる額は、利用する信用保証協会や融資制度によっても異なるため、事前に確認するのをおすすめします。
また、経営に介入されない点もメリットとして挙げられます。
あくまで金融機関は、事業資金を融資する立場でしかないためです。
「自社の意向を最大限反映した経営を行いたい」場合にも、適した資金調達方法と言えるでしょう。
デメリット
わかりやすいデメリットとして挙げられるのは、返済義務が生じる点です。
仮に事業の成果が芳しくなかったとしても、契約に基づき、毎月の返済をしなくてはいけません。
返済が厳しくなった場合、リスケ(※)の相談をすることも考えられますが、応じてもらえるとは限らない点に注意してください。
※リスケ:本来は、「スケジュールを変更する」「計画を組み直す」などの意味で使われる言葉で、転じて借入条件の変更を表す。
また、根本的な問題として、審査に通らないと利用できません。
このため、創業してからの年度が浅い場合、金融機関からの融資を受けるのは難しいのが実情です。
資金調達の方法その2・私募債を使う
私募債とは、社債の一種で、非上場の中小企業が金融機関や信用保証協会から保証を受けて私的に発行するものです。
社債とは、自社が有価証券を発行し、投資家に購入してもらうことで資金調達ができるものを指します。
社債には償還期限が定められていて、その期限を迎えたら償還しなくてはいけません。
また、投資家が保有している間は、定期的に利息を支払う必要があります。
メリット
私募債を使うメリットの1つに、社外へのアピール材料として使える点が挙げられます。
大前提として、私募債は金融機関や信用保証協会からの保証を受けないと発行できません。
つまり、私募債を発行できるということは「財務体質がよく、相応の信用力を有する会社」というお墨付きを得ていると考えましょう。
また、あらかじめ定められたスケジュールに伴い利息の支払や元本の返済を行うことができるのも、メリットの1つです。
デメリット
最大のデメリットは、リスケが基本的にできない点です。
通常の融資であれば、リスケの交渉をすれば通る可能性はありますが、私募債ではそれが望めません。
あくまで、当初のスケジュールに基づき、期限通りに利息の支払や元本の償還を行う必要があります。
実際のところ、どうしても行き詰まってしまった場合は、私募債の償還期日に一括償還を行った上で、金融機関から償還分の資金を借り入れるのが一般的です。
ただし、このような対応を必ず取ってくれるとは限らない上に、融資が受けられたとしても金利がかなり高く設定されるのが実情です。
資金調達の方法その3・不動産担保ローンを使う
不動産担保ローンとは、文字通り会社が保有する不動産を担保にし、事業資金を借り入れる方法のことです。
銀行やノンバンク(消費者金融や信販会社など銀行以外の金融機関)で提供されています。
メリット
不動産担保ローンのメリットとして、比較的低金利で借りられることが挙げられます。
貸す側である銀行やノンバンクからすれば、万が一返済が滞ったとしても担保になっている不動産を売却して回収すれば損をしないためです。
細かい数字は不動産担保ローンを提供する会社によっても異なりますが、年10%以下の金利で借りられるケースも多々あります。
また、比較的大きな金額の借入にも対応しているのもメリットの1つです。
融資金額の上限が5億円と非常に大きな商品もあるため、希望する資金調達額に合わせて選べます。
デメリット
不動産担保ローンのデメリットとして挙げられるのは、万が一返済が滞った場合、不動産が処分される点です。
数日延滞したくらいなら特段問題にはなりませんが、数ヶ月単位での延滞が生じ、督促にも応じなかった場合は処分されるリスクが高まります。
会社にとっても重要な経営資源を失うことになりかねません。
また、不動産の担保評価額が低かった場合、調達できる額も少なくなります。
そのため、必ずしも希望する額を調達できるとは限らない点に注意しましょう。
加えて、不動産の担保評価が必須となるため、融資が実行されるまでにも時間がかかります。
長い場合、1ヶ月以上かかるケースもあるため「できるだけ早く資金調達したい」という場合には、あまり向いていません。
資金調達の方法その4・株式を発行し出資を受ける
出資を募り、出資をしてくれた人に対して株式を発行し、資金調達を行う方法も広く活用されています。
なお、ベンチャー企業やスタートアップなど、高い成長が期待できる未上場企業に出資する会社のことをベンチャーキャピタルと言います。
出資した会社が無事に上場を果たした際に株式を売却し、出資と売却額の差額を利益として得るのが目的です。
また、同じような目的で出資する個人をエンジェル投資家と言います。
メリット
株式を発行し、出資を受けるメリットは、調達した資金を返済する必要がない点です。
融資であれば、仮に利益が出ていなかったとしてもスケジュール通りに返済しなくてはいけませんが、出資にはそのような制約はありません。
また、担保や保証人を用意しなくても利用できるのも、この方法のメリットです。
加えて、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家から出資を受けた場合は、経営上のアドバイスや人材の紹介などを受けられるというメリットもあります。
お金の面だけではないサポートが受けられるのは、何かと心強いでしょう。
デメリット
デメリットとして挙げられるのは、経営権を消失するリスクにさらされる点です。
持株比率が50%を超える株主に対しては、株主総会の普通決議を単独で可決する権限が定められています。
裏を返せば、会社の株を半分以上持っている株主であれば、ほとんどの意思決定を単独で行えると考えましょう。
あまりに高額の出資を受けてしまうと、持株比率が跳ね上がり、自身の経営権を消失する恐れがあるので気を付けてください。
また、経営権こそ消失しないものの、自社の意思のみで経営を行えなくなる点もデメリットの1つです。
特に、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家から出資を受けた場合、アドバイスと称して過度に干渉してくるケースも散見されます。
資金調達の方法その5・資産を現金化する
会社が保有している資産を売却することでも、資金調達が行えます。
売掛債権を専門の業者(ファクタリング会社、ファクター)に売却するファクタリングも、保有している資産の売却による資金調達の1つです。
メリット
資産を現金化するメリットは、返済義務もなければ、経営に干渉されることもない点にあります。
完全に自社の意思のみを反映させ、負担がない形で事業資金が調達できるのは、大きな強みです。
また、何を売却するかによっても異なりますが、やり方次第では迅速な資金調達ができるのも、この方法のメリットでしょう。
特にファクタリングの場合、申込をしたその日のうちに資金調達ができるケースも珍しくありません。
できるだけ早めにまとまった事業資金を調達したい場合は、方法の1つとして活用しましょう。
デメリット
大前提として、売却できる資産がなくては、この方法は使えません。
また、売却できる資産があったとしても、評価額が低く、思った額の資金調達ができない可能性も多分にあります。
特に、ファクタリングの場合、営業歴の浅い中小企業や個人事業主に対する売掛債権は評価が低くなりがちです。
加えて、売却先となる企業とのトラブルに巻き込まれる恐れもあります。
売却先を選定する際は、その企業の概要や評判もチェックした上で、どこにするかを決めましょう。
資金調達の方法その6・ビジネスローンを使う
ビジネスローンとは、事業資金の貸付を行うための融資商品です。
消費者金融や信販会社などのノンバンク、銀行が提供しています。
メリット
ビジネスローンのメリットとして、比較的早い段階で資金調達が可能なことが挙げられます。
具体的な日数はどこから借りるかによっても異なりますが、最短即日というパターンも珍しくありません。
利用希望者から申告された内容を点数化し、審査を簡略化する手法(スコアリング)が用いられているためです。
また、銀行融資に比べると、審査に通りやすい傾向があるのも大きな特徴です。
銀行融資を受けるのが難しい個人事業主に対しても門戸を開いているビジネスローンもあります。
デメリット
最大のデメリットは、金利が高いことです。
具体的な金利は個々のケースによっても異なりますが、年18.0%とかなり高くなるケースもあります。
金利が高ければ高いほど、毎月の返済額や総返済額も増えるため、この点には留意しなくてはいけません。
資金調達の方法その7・日本政策金融公庫から融資を受ける
日本政策金融公庫は、政府系の金融機関の1つです。
「一般の金融機関が行う金融を補完すること」を理念に掲げ、中小企業や小規模事業者など、資金調達がしにくい事業者への融資も積極的に行っています。
メリット
日本政策金融公庫の融資制度を使って事業資金を調達するメリットは、起業したてだったとしても借入がしやすい点です。
日本政策金融公庫では、さまざまな創業融資制度を設け、積極的に事業資金の融資を行っています。
銀行など民間の金融機関から融資を受けるよりははるかにハードルが低いのが大きな強みです。
また、担保や保証人を用意できなくても利用できます。
デメリット
実際に事業資金が調達できるまでに時間がかかる点がデメリットの1つとして挙げられます。
具体的な期間は個々のケースによっても異なりますが、だいたい3週間から1週間程度と考えましょう。
また、書類に不備があった場合、審査に通るのがかなり難しくなります。
経営革新等支援機関に認定されている専門家からのサポートは不可欠です。
資金調達の方法その8・補助金や助成金を使う
補助金や助成金は、国や地方自治体、民間の企業から受け取れるお金のことです。
一般的に、助成金は条件を満たせば受け取れるのに対し、補助金は審査の結果次第では受け取れないこともあるという違いがあります。
メリット
最大のメリットは、返済義務がないことです。
ある程度まとまった額を受け取ったとしても、補助金や助成金である以上は返済義務が生じません。
デメリット
すでに触れた通り、審査の結果次第では受け取れない可能性があります。
また、補助金や助成金は後払いが基本です。
つまり、審査に際して提出した事業計画に基づき投資を行った事実を報告し、承認されないと受け取れません。
事前に出費を賄えるだけの事業資金を用意しなくてはいけない点に注意しましょう。
資金調達の方法その9・クラウドファンディングを使う
クラウドファンディングとは、群衆を意味する「クラウド」と、資金調達を意味する「ファンディング」を組み合わせた造語です。
転じて、インターネット上で不特定多数から出費を募ること、およびそのプラットフォームを指します。
一般的には、クラウドファンディングサービスを提供する会社を通じてプロジェクトを公開し、出資を募ります。
メリット
融資や出資とは違い、基本的に誰でも利用できるのがクラウドファンディングのメリットです。
アイデアやビジョンが優れていれば、融資や出資を断られた場合でも、資金調達ができる可能性は十分にあります。
デメリット
不特定多数に向けて出資を募る方法である以上、優れたアイデアやビジョンがないと資金調達が難しいのも事実です。
中には、クラウドファンディングに挑戦したものの、まったく事業資金が調達できずに終わる可能性もあります。
比較的ハイリスク、ハイリターンな方法と言って構いません。
自社に合った資金調達方法を複数組み合わせよう
一口に資金調達といっても、さまざまな方法があります。
どの方法が適しているかは、その会社が置かれた状況によって異なるので、一概に「これなら大丈夫」とは言い切れません。
希望額や返済、事務手続き上の負担を考え、自社に合った方法を複数組み合わせて使いましょう。