法人の資金調達方法といえば、銀行を思い浮かべる人が大半ではないでしょうか。
しかし、法人の資金調達には、銀行だけでなく、さまざまな資金調達方法があります。
例えば、最短即日で資金調達できる方法や起業時に役に立つ資金調達方法などがあります。
そこで、この記事では法人の資金調達方法について、メリット・デメリットを解説するとともに、最短即日、起業時の資金調達方法についても解説します。
金融機関による融資
企業などの法人が資金調達をする場合、融資先として検討するのは、銀行をはじめとした金融機関ではないでしょうか。
企業などの法人が資金調達をする方法としては、まず金融機関による融資が挙げられます。
そこで、ここでは金融機関による融資について、金融機関ごとに解説します。
融資をする金融機関には、次のようなものがあります。
- 銀行
- 信用金庫
- 日本政策金融公庫(日本公庫)
- 信用保証協会
それぞれについて、解説します。
銀行
金融機関による融資の中で、最も身近なのが銀行による融資です。
しかし、中小企業にとって銀行による融資は、金融機関による融資の中で最もハードルが高い資金調達方法です。
というのは、銀行の審査は大変厳しいため、中小企業が融資の審査に通ることが難しいからです。
ただし、地方銀行であれば地域に密着した営業活動を行っていることから、メガバンクや都市銀行よりは融資は受けやすくなっています。
銀行による融資のメリット
- 金利を抑えることが可能
- 高額な融資に対応している
銀行による融資を選択するメリットとしては、これら2つのメリットが挙げられます。
銀行は、他の金融機関よりも融資の審査が厳しい反面、金利が低く(2~3%程度)、高額な融資(上限1億円程度)にも対応しているというメリットがあります。
そのため、どうしても高額な融資が必要という場合は、銀行に頼るのが一番です。
銀行による融資のデメリット
- 資金調達までの期間が長い
- 保証人や担保が必要な場合がある
銀行による融資の審査が厳しいと言われるのは、融資が下りるまでの期間が長い(1ヶ月程度)からです。
それだけ、銀行の審査では企業の業績や財務状況が厳しく審査されます。
さらに、保証人や担保が必要な場合があるのも銀行による融資のデメリットです。
このようなデメリットがあるため、中小企業にとって、銀行による融資はハードルが高いのです。
信用金庫
融資をする金融機関には、銀行のほかに信用金庫があります。
信用金庫は知っているかと思いますが、銀行と信用金庫の違いをご存じでしょうか。
銀行が株式会社であるのに対し、信用金庫は地域の会員の出資により運営する共同組織で、地域の発展を図ることを目的とする金融機関です。
信用金庫による融資のメリット
- 銀行よりも融資が受けやすい
信用金庫による融資のデメリット
- 事業者には会員資格の制限がある
- 金利が高い
事業者が信用金庫の会員になるには、地域内に事業所を有するほか、次のような制限があります。
・従業員300人以下または資本金9億円以下
日本政策金融公庫(日本公庫)
日本政策金融公庫(日本公庫)は、国が100%出資している政府系金融機関です。
そのため、民間の銀行や信用金庫より融資が受けやすく、「創業者や中小企業は融資が受けやすい」「金利が低い」などの特徴があります。
日本公庫による融資のメリット
- 銀行よりも金利が低い
- 銀行や信用金庫より融資が受けやすい
- 創業者や中小企業は融資が受けやすい
日本公庫による融資のデメリット
- 融資が下りるまでの期間が長い
- 保証人や担保が必要な場合がある
信用保証協会
信用保証協会とは、中小企業が金融機関から融資を受ける際の保証人になることによって、中小企業が融資を受けやすくするために設立された公的機関です。
具体的には、中小企業が融資を返済することが困難になってしまった場合、信用保証協会が立て替えて返済します。
このような融資を「信用保証付き融資」と言います。
立て替えてもらった中小企業は当然、信用保証協会に返済することになります。
信用保証協会による信用保証付き融資のメリット
- 中小企業が融資を受けやすくなる
信用保証協会による信用保証付き融資のデメリット
- 審査期間が長くなる
ファクタリング
ファクタリングとは、法人が保有する売掛債権を譲渡することによって資金を調達することです。
具体的には、売掛債権をファクタリング業者に譲渡したあと、買取代金から手数料を差し引いた金額を法人は受け取ります。
つまり、ファクタリングを利用することにより、従来の入金予定日より前に資金調達(売掛債権を現金化)することが可能になります。
ファクタリングには、買取ファクタリングや保証ファクタリングなどいくつかの種類がありますが、この記事では「買取ファクタリング」について解説します。
というのは、通常「ファクタリング」といえば、「買取ファクタリング」のことを指すからです。
2社間・3社間ファクタリング
買取ファクタリングには、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの2種類があります。
2社間ファクタリングは、ファクタリング利用会社とファクタリング業者の2社による契約のことです。
一方、3社間ファクタリングは、先ほどの2社に売掛先を加えた3社による契約のことを言います。
つまり、2社間・3社間ファクタリングの違いは、売掛先の承認が必要か否かという点です。
売掛先に債権を譲渡したことを知られると、資金繰りが悪化しているのではないかと疑われるおそれがあるため、売掛先の承認が必要か否かは、中小企業にとって大変重要なことなのです。
2社間・3社間ファクタリングの違いを表にまとめると、次のようになります。
2社間ファクタリング | 3社間ファクタリング | |
---|---|---|
契約当時者 | ファクタリング利用会社 ファクタリング業者 |
ファクタリング利用会社 ファクタリング業者 売掛先 |
資金調達までの期間 | 最短即日~数日 | 2週間~1ヶ月程度 |
売掛先への通知・承認 | 不要 | 必要 |
手数料 | 10~30%程度 | 1~9%程度 |
ファクタリングのメリット
ファクタリングの特徴を知るには、メリット・デメリットを知ることが早道です。
そこで、ここからはファクタリングのメリット・デメリットについて、解説します。
ファクタリングのメリットを挙げると、次のようになります。
- 最短即日で資金調達が可能(2社間)
- 売掛先に知られずに債権を譲渡できる(2社間)
- 審査対象が売掛先のため、自社の財務状況は重視されない
- 負債ではないため、信用情報に影響がない
- 担保や保証人が不要
それぞれ解説します。
最短即日で資金調達が可能(2社間)
資金調達としてのファクタリングの最も優れているところは、最短即日で資金調達できるところです。
というのは、金融機関からの融資など他の資金調達方法よりも圧倒的に早く資金調達が可能だからです。
しかし、すべてのファクタリング業者が最短即日の資金調達に対応しているわけではありません。
そのため、事前に調べるとともに直接連絡して、確認する必要があります。
また、最短即日で資金調達できるのは、3社間ではなく2社間ファクタリングです。
というのは、3社間ファクタリングは、売掛先に承認を得るなど2社間よりも手続きに時間がかかるからです。
売掛先に知られずに債権を譲渡できる(2社間)
ファクタリングの主な利用者である中小企業にとって、債権を譲渡することを売掛先に知られると、経営状態が悪化しているのではないかと疑われるリスクがあります。
そのため、売掛先に知られずに債権を譲渡できるのは、メリットになるのです。
ただし、債権譲渡を登記するファクタリング業者は避けるべきです。
というのは、債権譲渡を登記すると、売掛先に登記情報を見られるおそれがあるからです。
よって、債権譲渡登記を省略してくれるファクタリング業者を選ぶことが重要になります。
審査対象が売掛先のため、自社の財務状況は重視されない
ファクタリングにおいて、審査の対象になるのは、自社(ファクタリング利用会社)ではなく売掛先です。
そのため、売掛先の財務状況が重視されることから、ファクタリング利用会社の財務状況はそれほど重視されません。
例えば、ファクタング利用会社の業績が赤字であっても、ファクタリング審査に通る可能性はあります。
この点が、金融機関からの融資とは違うところです。
負債ではないため、信用情報に影響がない
ファクタリングは、銀行による融資のような負債ではありません。
債権を譲渡することにより、資金を調達するのです。
つまり、ファクタリングは負債ではないため、信用情報に記録されることはありません。
この点が銀行やビジネスローンなどの融資とは違うところです。
担保や保証人が不要
担保や保証人が不要な点も、ファクタリングのメリットになります。
金融機関による融資の場合、担保や保証人を要求されることがあるからです。
ファクタリングのデメリット
ファクタリングのメリットに続いて、ファクタリングのデメリットについて解説します。
ファクタリングのデメリットを挙げると、次のようになります。
- 金融機関による融資などと比べ手数料が高い
- 売掛先が契約に加わるため、債権譲渡したことが知られてしまう(3社間)
- 資金調達額の上限は「売掛債権額-手数料」
金融機関による融資などと比べ手数料が高い
ファクタリングの手数料は、金融機関による融資などの金利と比べると高くなっています。
しかし、手数料が高いというデメリットを差し引いても、最短即日で資金調達できるのは、中小企業にとってありがたいことなのです。
売掛先が契約に加わるため、債権譲渡したことが知られてしまう(3社間)
日本におけるファクタリングにおいて、3社間ファクタリングよりも2社間ファクタリングのほうが圧倒的に多いのは、この理由によるところが大きいと言われています。
つまり、中小企業の多くが売掛先(=取引先)に債権を譲渡したことを知られ、信頼関係が崩れることを恐れているのです。
資金調達額の上限は「売掛債権額-手数料」
売掛債権さえあれば、ファクタリングを利用できますが、資金調達できるのは、売掛債権額から手数料を差し引いた金額ということになります。
言い換えれば、売掛債権額から手数料を差し引かれるので、売掛債権の満額を資金調達することはできないということです。
補助金・助成金
補助金・助成金とは、国や地方自治体から支給される公的資金のことです。
補助金・助成金ともに申請する必要があり、審査があるため、必ずもらえるというわけではありません。
補助金は目的や対象、仕組みが決まっており、申請したとしても一部の事業者しか受給されないのに対し、助成金は給付要件さえ満たせば、受給されます。
また、補助金・助成金は全額が支給されるわけではなく一部の経費が受給される点は共通しています。
補助金・助成金ともに支払いは、「後払い(精算払い)」になります。
補助金・助成金のメリット・デメリット
補助金・助成金のメリット・デメリットを挙げると、次のようになります。
補助金・助成金のメリット
- 融資と違い返済する必要はない
- 申請者の財務状況や信用力はあまり問われない
- 審査にあたっては申請書類の重要性が高い
補助金・助成金のデメリット
- 補助金の募集は概ね6月頃までに限られる
- 精算払いである
ビジネスローン
ビジネスローンとは、運転資金や設備投資資金などの法人向け事業資金専用の融資のことです。
ビジネスローンは、銀行やネット銀行で取り扱っているほか、クレジットカード会社や信販会社、消費者金融会社でも取り扱っています。
クレジットカード会社や信販会社、消費者金融会社のことを「ノンバンク」と言い、預金を扱わず融資のみを扱っている金融会社を指します。
ビジネスローンは、金融機関による融資と比べると圧倒的に資金調達が早く、最短即日で資金を調達できる場合もあります。
また、金融機関による融資よりも金利が高くなっています。
ビジネスローンのメリット
ビジネスローンには、メリットはもちろんデメリットもあります。
そこで、ここからはビジネスローンのメリット・デメリットを解説します。
ビジネスローンのメリットとして、次のようなものが挙げられます。
- 最短即日で資金調達が可能
- 総量規制の対象外
- 担保や保証人が不要
最短即日で資金調達が可能
ビジネスローンの最大のメリットは、最短即日で資金調達が可能なところです。
ただし、ビジネスローンは返済しなければならないので、少ない金額であれば、ファクタリングを利用するという方法もあります。
どちらを利用するかは、その時の自社の状況によって判断してください。
金融機関からの融資より、ビジネスローンのほうが金利は高いですが、最短即日で資金調達できるというメリットには代えられません。
総量規制の対象外
ビジネスローンには、総量規制の対象外というメリットもあります。
総量規制とは、「個人の借入は年収の3分の1を超えてはならない」という規制のことです。
総量規制の対象外とは、年収の3分の1を超えた借入ができるということです。
必要な資金を借り入れることができるということですから、法人にとってはメリットになります。
担保や保証人が不要
金融機関による融資と違い、ビジネスローンには担保や保証人が必要ありません。
そのため、すぐに資金調達が可能なのです。
ビジネスローンのデメリット
ビジネスローンのデメリットとして、次のようなものが挙げられます。
- 金融機関による融資と比べ融資限度額が低い
- 金融機関による融資と比べ金利が高い
金融機関による融資と比べ融資限度額が低い
ビジネスローンの融資限度額は、金融機関による融資と比べて低くなっています。
そのため、必要な資金に達しない場合は、金融機関による融資など他の資金調達方法を検討する必要があります。
金融機関による融資に比べ金利が高い
ビジネスローンは、金融機関による融資と比べて金利が高くなっています。
金利が高くても、最短即日で資金調達できるなどのメリットがあるため、利用する価値はあります。
ただし、金利が高い分、計画的に返済することが重要になります。
エンジェル投資家
エンジェル投資家とは、起業したばかりのスタートアップ企業やベンチャー企業に投資する個人投資家のことです。
個人で投資できるだけの資金を持っていることから、実業家や経営者などの成功者が多いです。
エンジェル投資家と呼ばれるのは、起業間もない会社に大口の投資をすることにより、手を差し伸べる存在だからです。
しかし、エンジェル投資家に投資してもらうためには、将来性があると認められる商品やサービスを提示する必要があります。
エンジェル投資家のメリット・デメリットは、次のようになります。
エンジェル投資家のメリット
- 投資資金の返済は不要
- 経営のアドバイスを受けられる
エンジェル投資家のデメリット
- 経営の主導権を握られるリスクがある
- 経営がうまくいかないと資金を回収される
ベンチャーキャピタル
ベンチャーキャピタルとは、創業したばかりの未上場企業に出資することにより、株式の値上がり益を目的とする投資会社のことです。
ベンチャーキャピタルは、経営コンサルティングの役割を果たすだけでなく、出資額によっては、経営の主導権を握ることもあります。
ベンチャーキャピタルのメリット・デメリットについては、エンジェル投資家とほとんど同じことから、省略します。
クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、インターネットの普及とともにアメリカではじまり、日本でも近年急速に市場が拡大している新しい資金調達方法です。
クラウドファンディングは、インターネットを通じて多くの個人から手軽に投資を募る仕組みのことを言います。
現在、クラウドファンディングの種類は、基本的に次の3種類があります。
- 購入型クラウドファンディング
- 寄付型クラウドファンディング
- 投資型クラウドファンディング
クラウドファンディングのメリット
- 従来の資金調達方法よりも手軽にできる
- テストマーケティングとして活用できる
クラウドファンディングのデメリット
- 目標金額に達しないことがある
まとめ
この記事では、法人の資金調達方法についてメリット・デメリットを解説するとともに、最短即日、起業時の資金調達方法についても解説しました。
資金調達方法には、銀行などの金融機関による融資だけでなく、ファクタリングのような売掛債権の譲渡による資金調達方法があります。
ファクタリングは、補助金・助成金と同じく融資ではないので、返済する必要がありません。
法人の中でも中小企業にとって資金調達しやすいのは、ファクタリングやビジネスローンになります。
起業時の資金調達先として、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルを挙げることができます。
最近では、クラウドファンディングが新たな資金調達方法として注目を集めており、市場規模が急拡大しています。
この記事が、最短即日、起業時に資金調達する際の参考になれば幸いです。