普段から会計処理を担当していたとしても、ファクタリングは仕訳方法についてはよくわからないという人もいるかと思います。
ファクタリングは新しい資金調達方法であるため、会計処理をやったことがないという人もいるでしょう。
しかし、ファクタリングの仕訳は、それほど難しくはありません。
そこで、この記事ではファクタリングの仕訳方法や勘定科目、注意点などの会計処理について、徹底解説します。
ファクタリングの仕訳は種類ごとに異なる
ファクタリングの仕訳は、種類ごとに異なります。
ファクタリングには、買取型ファクタリングと保証型ファクタリングの2種類があります。
他にもファクタリングの種類はありますが、この記事ではこの2種類のファクタリングを扱います。
さらに買取型ファクタリングには、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの2種類があります。
そのため、ファクタリングの種類をまとめると、次のようになります。
- 買取型ファクタリング
- 2社間ファクタリング
- 3社間ファクタリング
- 保証型ファクタリング
買取型ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング業者に譲渡することで資金調達できるサービスです。
一方、保証型ファクタリングとは、売掛債権に保険をかけることによって、取引先から売掛金を回収できなくなったとしても、ファクタリング業者が売掛金の支払いを保証してくれるサービスのことです。
2社間・3社間ファクタリングについては、後ほど解説します。
買取型ファクタリングと保証型ファクタリングでは、仕訳方法が違います。
そこで、買取型・保証型ファクタリングの仕訳方法について、次のところから解説します。
ファクタリングの仕訳方法と勘定科目
ファクタリングには、買取型ファクタリングと保証型ファクタリングの2種類があります。
そこで、ここでは買取型ファクタリングと保証型ファクタリングの仕訳方法と勘定科目について、解説します。
併せて、買取型・保証型ファクタリングの仕訳方法の違いについても、解説します。
- 売掛金が発生したときの仕訳方法
- 買取型ファクタリングの仕訳方法と勘定科目
- 保証型ファクタリングの仕訳方法と勘定科目
売掛金が発生したときの仕訳方法
買取型・保証型ファクタリングの仕訳方法を解説する前に、売掛金が発生したときの仕訳方法を解説します。
売掛金は、売上が発生した時点で仕訳をします。
1,000万円の売上があった場合、次のように仕訳します。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
売掛金 | 1,000万円 | 売上 | 1,000万円 |
後日、売掛金が売掛先(取引先)から入金された場合、次のように仕訳します。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 1,000万円 | 売掛金 | 1,000万円 |
売掛先から売掛金が入金された場合、借方に「普通預金」、貸方に「売掛金」と記入します。
以上が、売掛金が発生したときの仕訳方法になります。
買取型ファクタリングの仕訳方法と勘定科目
買取型ファクタリングを仕訳するのは、次の2つの時点になります。
- ファクタリング契約時
- 売掛債権の売却代金が入金されたとき
① ファクタリング契約時
ファクタリング契約を結んだときの仕訳には、「未収入金」という勘定科目を使います。
「未収入金」とは、支払期日までに入金される予定だが、まだ入金されていないという意味です。
ファクタリング契約を結んだときの仕訳は、次のようになります。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
未収入金 | 1,000万円 | 売掛金 | 1,000万円 |
② 売掛債権の売却代金が入金されたとき
売掛債権の売却代金が入金されたときとは、売掛債権をファクタリング業者に売却することによって資金調達をしたときのことです。
ファクタリングにおいて、資金調達できるのは、売掛債権から手数料を差し引いた金額になるため、手数料を仕訳する必要があります。
ファクタリングの仕訳では、手数料は「売上債権売却損」という勘定科目を使います。
ファクタリングにおける売掛債権の売却代金が入金されたときの仕訳は、次のようになります。
なお、売掛債権を1,000万円、手数料を5%とします。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 950万円 | 未収入金 | 1,000万円 |
売上債権売却損 | 50万円 |
ファクタリング契約と入金が同日(即日入金)だった場合の仕訳方法と勘定科目
ファクタリングのメリットとして、最短即日で資金調達できることが挙げられます。
ファクタリング契約と入金が同日、つまり即日入金された場合、通常のファクタリングの仕訳方法とは違っています。
そこで、ファクタリング契約と入金が同日(即日入金)だった場合の仕訳方法を解説します。
通常のファクタリングの仕訳は、次のように2つの時点で仕訳をします。
- ファクタリング契約時
- 売掛債権の売却代金が入金されたとき
一方、ファクタリング契約と入金が同日(即日入金)だった場合の仕訳は、次のように3時点で仕訳をすると考えます。
- 売掛金発生時
- ファクタリング契約時
- 売掛債権の売却代金が入金されたとき
① 売掛金発生時
ファクタリング契約と入金が同日(即日入金)だった場合、「売掛金が発生した」という仕訳をします。
というのは、ファクタリング契約と入金が同日だった場合、②ファクタリング契約時の勘定科目である「未収入金」が発生しないからです。
そのため、②ファクタリング契約時の仕訳は、省略することができます。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
売掛金 | 1,000万円 | 売上 | 1,000万円 |
② ファクタリング契約時
「未収入金」が発生しないため、ファクタリング契約時の仕訳は省略します。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
未収入金 | 1,000万円 | 売掛金 | 1,000万円 |
つまり、この②ファクタリング契約時の仕訳は削除します。
③ 売掛債権の売却代金がの入金されたとき
貸方には、通常のファクタリングの「未収入金」の代わりに、①売掛金発生時の「売掛金」を記入します。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 950万円 | 売掛金 | 1,000万円 |
売上債権売却損 | 50万円 |
保証型ファクタリングの仕訳方法と勘定科目
保証型ファクタリングは、売掛債権に保険をかけることで、取引先から売掛金を回収できなくなったとしても、ファクタリング業者が売掛金の支払いを保証してくれるサービスです。
そんな保証型ファクタリングを仕訳する場合、次の3つのケースが考えられます。
- 保証型ファクタリング契約時
- 保証型ファクタリングを利用したものの、取引先から売掛金が支払われた場合
- 取引先が倒産したことから売掛金を回収できなかったが、保証型ファクタリングを利用していた場合
ここでは保証料を10万円として、これらの3つのケースにおける仕訳について解説します。
① 保証型ファクタリング契約時
保証型ファクタリングの契約時は、仕訳をする必要はありません。
というのは、保証型ファクタリング契約は、会計上の取引に該当しないからです。
仕訳なし
② 保証型ファクタリングを利用したものの、取引先から売掛金が支払われた場合
この場合、保証料として「支払手数料」という勘定科目を使います。
取引先から売掛金が支払われた場合、保証型ファクタリングの取引に動きがないことから、仕訳は次のようになります。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
支払手数料 | 10万円 | 普通預金 | 10万円 |
③ 取引先が倒産したことから売掛金を回収できなかったが、保証型ファクタリングを利用していた場合
売掛債権に保険をかけていたことから、ファクタリング業者から保証金が支払われます。
この場合の仕訳では、回収できなかった売掛債権を勘定科目「貸倒損失」として計上します。
次にファクタリング業者から受け取った保証料を、勘定科目「雑収入」として処理します。
その結果、保証型ファクタリングの仕訳は、次のようになります。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
貸倒損失 | 1,000万円 | 売掛債権 | 1,000万円 |
普通預金 | 1,000万円 | 雑収入 | 1,000万円 |
2社間・3社間ファクタリングの仕訳方法と勘定科目
2社間ファクタリングとは、ファクタリング利用者とファクタリング業者で契約するファクタリングのことです。
一方、3社間ファクタリングとは、ファクタリング利用者・業者の2社に売掛先を加えた3社で契約するファクタリングのことです。
3社間ファクタリングには、売掛先が加わることで、売掛金を回収する必要がないというメリットがある一方で、売掛先に債権譲渡したことが知られてしまうというデメリットがあります。
2社間・3社間ファクタリングの仕訳は、3社間よりも2社間ファクタリングのほうが仕訳の数が多くなります。
というのは、2社間ファクタリングでは、売掛金を回収する必要があるからです。
それでは、2社間・3社間ファクタリングの仕訳方法と勘定科目について解説します。
2社間ファクタリングの仕訳方法と勘定科目
2社間ファクタリングを手順どおりに仕訳すると、次の6つの仕訳に分けることができます。
- 売掛金の発生
- ファクタリング契約時
- 売掛債権の売却代金が入金されたとき
- ファクタリング契約と入金が同日(即日入金)だった場合
- 売掛金が売掛先から入金されたとき
- 回収した売掛金をファクタリング業者に支払うとき
① 売掛金の発生
2社間ファクタリングをするためには、売掛債権(売掛金)を持っている必要があります。
商品やサービスの取引をすることにより、売上が発生して売掛金が発生します。
そのため、売掛金の発生時の仕訳は、次のようになります。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
売掛金 | 1,000万円 | 売上 | 1,000万円 |
② ファクタリング契約時
資金を調達するため、ファクタリングを利用する場合、売掛債権(売掛金)を譲渡します。
そのため、ファクタリング契約をする場合、貸方に売掛金を記入し、借方に「未収入金」を計上します。
というのは、売掛債権を譲渡することにより、売却代金をもらえる権利を得るからです。
ファクタリング契約時の仕訳は、次のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
未収入金 | 1,000万円 | 売掛金 | 1,000万円 |
③ 売掛債権の売却代金が入金されたとき
ファクタリング契約の締結後、譲渡した売掛債権の売却金額から手数料を差し引いた金額を、ファクタリング業者から受け取ります。
そのため、貸方に「未収入金」を記入し、借方に普通預金を計上します。
手数料は「売掛債権売却損」として、借方に計上します。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 950万円 | 未収入金 | 1,000万円 |
売上債権売却損 | 50万円 |
④ ファクタリング契約と入金が同日(即日入金)だった場合
ファクタリングには、最短即日で資金調達できるというメリットがあります。
そのため、ファクタリング契約と売却代金の入金が同日(即日入金)になることがあります。
この場合、③の仕訳方法とは違ってきます。
上記の①~③のうち、② ファクタリング契約時の仕訳の必要がなくなります。
というのは、ファクタリング契約時の仕訳で「未収入金」が発生しなくなるからです。
その結果、「未収入金」の代わりに「売掛金」を貸方に計上します。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 950万円 | 売掛金 | 1,000万円 |
売上債権売却損 | 50万円 |
⑤ 売掛金が売掛先から入金されたとき
2社間ファクタリングでは、ファクタリング利用者が売掛金を売掛先から回収します。
この場合の仕訳に計上される勘定科目は、「預り金」です。
というのは、売掛金の支払いを受ける権利(売掛債権)を持っているのは、ファクタリング業者だからです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金・預金 | 1,000万円 | 預り金 | 1,000万円 |
⑥ 回収した売掛金をファクタリング業者に支払うとき
売掛先から回収した売掛金をファクタリング業者に支払うのは、「預り金」を支払うということです。
そのため、この場合の仕訳は次のようになります。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
預り金 | 1,000万円 | 現金・預金 | 1,000万円 |
3社間ファクタリングの仕訳方法と勘定科目
3社間ファクタリングの仕訳は、2社間ファクタリングの仕訳より少なくなっています。
というのは、売掛先が契約に加わっているため、売掛先が直接ファクタリング業者へ売掛金を入金するからです。
そのため、3社間ファクタリングの仕訳は次のようになります。
- 売掛金の発生
- ファクタリング契約時
- 売掛債権の売却代金が入金されたとき
- ファクタリング契約と入金が同日(即日入金)だった場合
①~④の仕訳は、2社間ファクタリングと同じなので、省略します。
3社間ファクタリングの仕訳については、「3.(1)2社間ファクタリングの仕訳方法と勘定科目」をご覧ください。
ファクタリングの仕訳における注意点とは
ファクタリングの仕訳について、種類ごとに解説してきましたが、3つの注意点があります。
ファクタリングの仕訳における3つの注意点とは、次のとおりです。
- ・ファクタリングに消費税はかからない
- ・手数料の勘定科目は「売掛債権売却損」
- ・現金の入金が決算期末をまたぐ場合の課税は?
これらの注意点について、それぞれ解説します。
ファクタリングに消費税はかからない
ファクタリングは、売掛債権を譲渡することにより資金調達することが可能です。
「売掛債権の譲渡」は、「金銭債権の譲渡」に該当するため、非課税取引になります。
そのため、ファクタリングで発生する手数料などは、非課税になります。
つまり、ファクタリングは非課税取引であるため、消費税はかかりません。
手数料の勘定科目は「売掛債権売却損」
ファクタリングにおいて、手数料の勘定科目として「売掛債権売却損」を使います。
ファクタリングは、売掛債権を譲渡した対価として、売掛債権の売却代金から手数料を差し引いた金額が入金されることから、手数料分の損が発生するからです。
ただ、「売却債権売却損」の代わりに、他の勘定科目を利用することもできます。
代わりに利用する勘定科目として、「雑損失」「支払手数料」「割引料」などが挙げられます。
現金の入金が決算期末をまたぐ場合の課税は?
ファクタリングは、最短即日で資金調達ができるというメリットがありますが、契約から現金の入金までの間に決算期末をまたぐ場合があります。
この場合、未入金であっても、債権譲渡により発生した売上に対して税金が課されるため、注意が必要です。
まとめ
この記事では、ファクタリングの仕訳方法や勘定科目、注意点などの会計処理について、徹底解説しました。
ファクタリングは融資とは違う資金調達法ですが、株や債券などの金融商品の取引と同じです。
そのため、普段から会計処理をやっている人であれば、それほど難しくなかったのではないでしょうか。
ファクタリングがどんな取引かがわかれば、仕訳方法や勘定科目についても、理解しやすいと思います。
この記事が、ファクタリングの仕訳方法と勘定科目を理解するための参考になれば幸いです。