昨今、病院でもどんどん普及し始めているファクタリングという資金調達方法をご存じでしょうか?
ファクタリングの最大のメリットは銀行の融資・借り入れと違い、事前の信用情報はさほど問われません。
また、融資・借り入れと違い、1~2日で即時現金化することができるため、感染症拡大以降、新しい資金調達の方法の1つとして注目を集めています。
今回は実際にファクタリングを利用したことがある当事者が診療報酬ファクタリングについて解説していきます。
診療報酬とは?
はじめに、診療報酬について説明します。
日本では国民健康保険・社会保険など日本国民全員に公的医療保険制度の加入が義務付けられています。
保険証を提示することで通常の金額の3割負担で医療サービスを受けることができます。
医療機関に支払われる金額は診療報酬と呼ばれ、国が点数を定めています。
その診療報酬のうち、自己負担分と加入中の医療保険団体・事業者が負担するという仕組みになっています。
ファクタリングとは?
ファクタリングとは、請求書等の売掛金をファクタリング業者に代わりに買い取ってもらうサービスです。
企業ごとの取引では支払いまでに2か月以上かかることもあります。
例えば、診療報酬を10月末締めで翌月申請し、翌々月末支払いの場合、自己負担金額である3割分は患者さんから毎回受け取ることができますが、残り7割分は2カ月半後に振り込まれることになります。
そのため、医療機関の場合、感染症の拡大で一時的に患者数が減少すると、資金調達に困るケースもあるでしょう。
そういった時に借金などを抱えずに資金調達できるのがファクタリングです。
診療報酬ファクタリングのメカニズムとは?
ファクタリングの概要を把握できたところで診療報酬ファクタリングのメカニズムを紹介しましょう。
ファクタリングは以下2つの形式があります。
- 3社間ファクタリング
- 2社間ファクタリング
通常、特にフリーランス等個人事業主のケースでは、取引先にファクタリングを利用していることが知られたくない人も多いです。
そのため、2社間ファクタリングといって、ファクタリング業者とファクタリング利用者で取引することが多いサービスです。
ただし、今回は診療報酬ファクタリングのため審査支払機関との取引が主なケースになるでしょう。
そのため、3社間ファクタリングについてより細かく説明していきます。
3社間ファクタリングのメカニズム・仕組みとは?
3社間ファクタリングとは、診療報酬の取引をしている2社にファクタリング業者が加わる仕組みです。
請求先も加わることになるため、後日の代金未回収のリスクをかなりおさえることができます。
病院・クリニックが7割分の診療報酬を受け取る先は「審査支払機関」から受け取ることになっています。
審査支払期間は次の2社です。
- 社会保険診療報酬支払基金
- 国民健康保険団体連合会
上記2社の審査支払期間と病院・クリニックが債権譲渡契約を結びます。
両者の合意のもと、社名・国保に「債権譲渡通知」を発送する流れになります。
その後、クリニックがファクタリング会社より代金を受け取り、審査支払期間の1・2の団体から診療報酬分の売掛金が支払われ、取引が完了します。
診療報酬ファクタリングのメリットとは?
ここからは診療報酬ファクタリングのメリットについて解説していきます。
大きく次の4つです。
- 診療報酬の出金スピードが速い
- 手数料が安い
- 借り入れにならず、負債を抱えなくて済む
- 審査での信用情報のハードルが低い
順番に説明していきましょう。
診療報酬ファクタリングの出金スピードが速い
まず、出金スピードが速いことです。
通常、病院・クリニックが診療報酬を受け取るまでに約2~3ヵ月かかることが一般的です。
それに比べて仮に3者間ファクタリングを利用したとしても1週間程度で資金を受け取ることができます。
感染症の拡大で患者さんが減ってしまった病院の場合、コロナ融資と併用すると大変おすすめできますよね。
診療報酬ファクタリング利用時の手数料が安い
次に手数料が安い点です。
2社間ファクタリングを利用する場合、手数料は高くなりがちですが、診療報酬ファクタリングの場合、3社間ファクタリングとして利用することが多いでしょう。
3社間ファクタリングの場合、今回の請求先は審査支払機関です。
ファクタリング業者サイドからすると、確実に金額を受け取ることができます。
未回収になるリスクがおさえられ確実に売掛金分の金額が担保されているため、手数料も安く利用できるでしょう。
借り入れにならず、負債を抱えなくて済む
3つ目のメリットは借り入れにあたらないため、負債・債務にならないことです。
診療報酬ファクタリングは売掛金の即時現金化です。
銀行・金融機関からの借り入れ・カードローンと性質が違うため、負債をかかえずすみます。
審査での信用情報のハードルが低い
最後のポイントが審査のハードルが低いことです。
今回のように支払い審査機関等大きな団体・企業と3者間ファクタリングを利用する場合、請求先の情報もはっきりわかっています。
そのため、審査のハードルも低いです。また、仮に借金・赤字経営になっていたとしても、信用情報は関係ないことが多いです。
診療報酬ファクタリングの注意点
最後に、診療報酬ファクタリングの注意点を説明します。
ファクタリングというサービスをまだまだ正しく理解できていない人も多いですよね。
使いすぎると、ファクタリングサービスに依存するだけになるためおすすめできません。
事前に充分調べたうえで利用するようにしましょう。
資金調達できる金額は診療報酬分の売掛金のみ
注意点の1つ目が資金調達できる金額は診療報酬の売掛金(売り上げ金額)のみということです。
ファクタリングをカードローン・融資等の資金調達方法と勘違いしないようにしましょう。
ファクタリングは売掛金(受け取っていない売り上げ)をファクタリング業者に買い取ってもらい資金を得るサービスです。
借り入れ・ローンや融資と比べて金額の上限は決まっていると考えてください。
悪徳業者にあたらないよう事前調査は入念に
注意点2つ目が悪徳業者にあたらないように事前にファクタリング会社の情報を調べるようにしてください。
違法なファクタリング業者でファクタリングと言いながら貸付をしていたというケースも多数発覚しています。
ファクタリングは売掛金債権を事前に買い取るサービスのため、サービス提供会社の情報を事前に調査したうえで利用するようにしてください。
掛け目制度を利用している場合、手数料以外の全額受け取ることができないケースもある
最後の注意点が掛け目制度がある場合、すぐに全額受け取ることができないケースもあることです。
掛け目制度とは、ファクタリング業者サイドからすると一時金・保証金になるからです。
売掛債権を買い取るファクタリング業者は手元に一時的に債務が残ることになります。
売掛金の回収リスクを減らすために、掛け目を利用することが多いです。
そのため、手数料+掛け目をひいた残りの金額しか受け取ることができないこともあります。
また、掛け目での一時金を預かったまま返してもらえない悪徳業者も存在します。
充分注意しましょう。
診療報酬ファクタリングを利用するのにおすすめな人
先ほどの診療報酬ファクタリングの注意点を踏まえたうえで、利用するのに向いている人を説明します。
- コロナ融資と併用したい方
- 病院・クリニックを開業して間もないため、手元の余裕資金が少ない方
上記のメリット・注意点を理解して利用する分には問題ありません。
資金調達方法の一つとして知っておくことで万が一に備えることもできますよね。
それでは順番に説明しましょう。
コロナ融資(新型コロナウイルス感染症特別貸付)と併用したい方
はじめに、コロナ融資と併用したいと考えている方です。
先ほど説明した通り、銀行・政策金融公庫の融資の場合、資金を調達するまでに最低でも1ヶ月弱かかることが多いです。
一時的に多額の資金が必要になることもあるでしょう。
診療報酬ファクタリングを利用することで一時的に売掛金の債権を売却することで手元の資金を集めることにつながります。
融資を事前に利用されているので、ファクタリングの上記の解説も問題なく理解できているでしょう。
資金調達方法の一つとして利用してみてはいかがでしょうか?
病院・クリニックを開業して間もないため、手元の余裕資金が少ない方
次に、開業したてで余裕資金が少ない人もおすすめです。
残念ながら、創業して間もない場合、銀行・金融機関の信用調査により融資を受けることができないケースもあります。
手元の余裕資金を事前に用意してスタートするのが一番手堅いですが、そういう人ばかりではありませんよね?
診療報酬ファクタリングは売掛金を素早く資金として換金できるのでおすすめでしょう。
診療報酬ファクタリングはメリット・注意点をきちんと把握したうえで健全な利用を
ここまで診療報酬ファクタリングについて下記のポイントを解説しました。
- 診療報酬とは?
- ファクタリングの仕組み(3者間ファクタリングの利点)
- 診療報酬ファクタリングのメリット・注意点
- 診療報酬ファクタリングをおススメできる人
以上4つのポイントを説明しました。
正しく活用すれば、資金調達方法として大変便利なサービスです。
ただし、残念ながら、悪徳業者もいるのが現状です。
今回解説した内容を理解したうえで利用するといいでしょう。